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IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画第4回 IoTと商標権の関係について分かりやすく解説します

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コラボシリーズの4回目は IoTと商標権の関係について分かりやすくお伝え致します。

1.IoT商品について解説します

IoTはモノのインターネットと言われるように、単なる商品だけでなく、その商品に関する様々データが通信回線を通じてインターネットに送られて、インターネット上のクラウドのサーバーでデータ解析されて、それが商品やモニタ装置にフィードバックされるというのが一般の流れです。

 

上記のIoT自体商品に留まらず、サービスとして捉えられることが多いのですが、一方、一般消費者が扱うのはクラウド、インターネットではなく、御自身が手に取ったり眺めたりする商品ですので

IoT商品として理解した方が分かりやすいかと思います。

ということで、この記事ではIoT商品について解説していきます。

 

1.1 IoT商品の種類について

IoTは必ずモノが伴うために、モノに関しては商品と捉えることが出来ます。ただし、ここでは

一般消費者が購入して主に自宅で使用する商品に特化して説明していきたいと思います。

 

そうした自宅で使用するIoT商品も以下のように大きく2つに分けることが出来ます。

 

 

①IoT家電 いままで使われていた白物家電、黒物家電のIoT化商品

②IoT家具、雑貨関連 今まで家電とは捉えられなかった物のIoT化商品

 

 

以下、それぞれのIoT化商品についてもう少し詳しく解説します。

 

1.2 IoT家電商品の歴史と現在の主な商品

IoT家電商品はこの数年定着しましたが、実はIoT家電商品は長い歴史があります。約20年前の2000年代前半からIoTという名前が流行される前から検討されていました。

 

筆者は当時電気メーカにおいて、無線LANを携帯電話に搭載するというプロジェクトのリーダーを務めており、同じメーカで開発製造販売していたテレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラ、パソコン、家庭用コードレス電話などの開発部門と交流を図り、家電機器連携に取り組んでいました。

 

当時の会社においては、“ネット家電連携”と称していました。

 

しかしながら、約20年前に比べて無線LANのデバイスや、有線通信のデバイスの値段は高価であり、私が担当していた携帯電話の中に無線LANデバイスが搭載されるまでに数年かかりました。

上に記したようないわゆるAV機器関連もパソコンを除いて殆ど無線LANなどの通信デバイスは搭載されなかったのです。

 

2010年代になって、無線LANのデバイス価格が安くなると共に、ブルートゥースでIoT商品向けに低消費電力に出来るブルートゥース・ローエナジー(通称BLE)という規格が新たに出来たことによって、IoT家電商品が普及するようになりました。

 

現在では、テレビやDVDレコーダー(最近は減りましたが)などがインターネットに接続出来るのは当たり前で、さらには無線LANもWi-Fiという言葉が行き渡りましたが、Wi-FiとBLEの無線通信機能が搭載されている商品が増えて、AV機器関連は殆どIoT家電商品になったといえます。

 

さらに2015年以降になると、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどでもIoT家電商品が増えてきています。結局こういった商品に関してはニーズが先かシーズが先かという議論が良くあるわけですが、上記の通り、Wi-FiとBLEで安価なデバイスが行き渡ったというシーズの変化によってIoT家電商品が普及するようになったことは間違いないです。

 

逆に筆者がWi-Fiを携帯電話に搭載するプロジェクトの時点では、シーズが十分でなかったので普及しなかったといえます。

 

さらにもう一つIoT家電商品が普及したのは、スマートフォンとの連動です。スマートフォンのアプリによって家電商品のデータが殆どのケースでBLEの無線通信機能によってスマートフォンに送られてディスプレイに様々なデータが表示されるというのが当たり前になっています。

 

その場合は実はインターネットを介している訳ではないのでIoTではなく、スマート家電という名前で言われる場合もあります。ただ総称として、必ずしもインターネットを介さない場合でも家電商品とスマートフォンで連携している場合は、IoT化と称している場合が多いです。

 

1.3 IoT家電商品の主な機能

以下のような機能があります。

 

 

・テレビ録画を外からリモートで行なう機能

・エアコンや洗濯機の遠隔操作

・電子レンジでのお好みメニュー提案

・家電製品全般に関してメンテナンスの時期を知らせる機能

 

 

1.4 IoT家具、IoT文房具

上記1.2~1.3で述べたIoT家電製品は元々電気製品で、殆どの製品には元々マイクロプロセッサが搭載されている いわゆるシステム商品でしたが、2010年代になって、今まで全く電気、マイクロプロセッサとは縁の無い商品がIoT化商品として発売されるようになりました.主な物として4つ上げたいと思います。

 

 

①スマートロック 

鍵の電子化、IoT化。伝統的な鍵でドアを開けるのでは無く、カードやタグやスマートフォンで

鍵を開ける上に、集合住宅などでの鍵の管理等を、インターネットのサーバーを介して行えるなどの機能、サービスが普及しています。

 

 

 

②睡眠の質がモニタできるベッド

ベッドのマットレスの中などに睡眠の質をモニタできるマットレスを搭載し、そのデータを

スマートフォンに直接送る、またはインターネットを介してスマートフォンに送ることによって

毎日の睡眠の質をグラフなどでモニタすることが出来ます。

 

 

 

③スマートウォッチ

腕に時計を装着することにより、人の生体情報として、心拍数とかの生体情報を時計で直接確認出来る上、その情報をスマートフォンに送ってグラフとして見ることが出来ます。

 

 

 

④スマートミラー

 鏡とディスプレイが組み合わさった物がスマートミラーです。例えば鏡を見ながら化粧をしつつ、化粧の仕方に関する情報を同時に映すといったことが可能になります。

 なおスマートミラーに関しては、家の中もさることながら、美容室とか、スポーツジム、ヨガ教室、町中で自分の立ち姿+情報入手など様々な店舗、商店街などで普及していくことが予想されています。

 

                                                                               (大森 正)

 

2.IoTと商標権の関係

 

2.1 新しい商標登録

商標権は、トレードマークやブランドの権利者を保護する知的財産権です。トレードマークは、他人の家畜と区別するために、自分の家畜に焼印を押したのが始まりだと言われています。18世紀の英国に始まる産業革命により、大量生産・大量販売が行われるようになりました。生活は豊かになりましたが、有名企業のトレードマークの模倣品が横行し、権利者に大きな損害が発生するようになりました。

 

そのため、トレードマークの模倣対策として商標法が制定されました。世界初の商標法は、1857年、フランスの「製造標及び商業標に関する法律」です。フランスには老舗ブランドが多く、ルイ・ヴィトン(1821年創業)、エルメス(1837年創業)、カルティエ(1847年創業)などは、この時代に創業し、現在まで続いています。その後、欧州各国で商標法が制定されました。

 

参考)

商標権の歴史 家畜の盗難防止対策がブランドビジネスに発展した理由

https://compliance.lightworks.co.jp/learn/trademark-right-history/

 

日本では明治時代の1884年、最初の商標法が制定されました。その後何度か改正され、現在の商標法は、1959年に制定されたものです。トレードマークの模倣対策として始まった商標法ですが、その後、文字、図形、記号に加えて、立体形状が立体商標として登録できるようになりました。例えば、不二家のペコちゃん・ボコちゃん人形や日本ケンタッキー・フライド・チキンのカーネル・サンダース立像などが、立体商標として登録されています。

 

2015年の法改正により、動き商標(例:TV画面などに映し出される変化する文字や図形)、ホログラム商標(例:見る角度により変化して見える文字や図形)、色彩のみからなる商標(例:商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩)、音商標(CMなどに使われるサウンドロゴやパソコンの起動音)、位置商標(例:文字や図形などの標章を商品等に付す位置が特定される商標)が登録できるようになりました。

 

具体的な登録商標の例は、次の特許庁の資料が参考になると思います。

 

原典)

「事例から学ぶ商標活用ガイド」、特許庁、P12

https://www.jpo.go.jp/support/example/document/trademark_guide2019/guide01.pdf

 

2.2 IoTの商標登録

それでは、IoTではどのような商標が登録されているのでしょうか。

 

IoT分野では、前述のようにスマートウォッチ、スマートミラーなど呼ばれる様々なデバイスがIoT端末として利用されています。例えば、スマートウォッチについて、No.1ブログでご紹介したJ-Plat Pat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)で検索すると次の商標が登録されていました。

 

例1 :SMARTWACH(呼称:スマートウォッチ)

      登録番号 :第4724422

      権利者   : NECネッツアイ株式会社

      出願日   : 2003年3月4日

      分類     : 第9類、第37類、第38類、第42類

 

また、スマートミラーについては、次の商標が登録されていました。

 

例2 :スマートミラー

      登録番号 :第5668747

      権利者   :シャープ株式会社

      出願日   :2013年12月11日

      分類     :第9類

 

商標は、分類単位で登録されます。商品は第1類から第34類まで、役務(サービス)は、第35類から第43類まで登録できます。

 

第9類は、科学用、航海用、検査用等の機械器具です。具体的には、ナビゲーション、USBメモリ、コンピュータソフトウェアなどです。第35類は、広告、事業処理、小売・卸売サービスなどが対象です。具体的には、オンラインショッピング、オンライン広告などです。第37類は、建設工事、修理等のサービスです。具体的には、建築物、道路、建設用の工具、各種の修理サービスなどです。

 

第38類は、電気通信サービスです。例えば、デジタルファイル・電子メールの伝送交換、ビデオオンデマンド、電話・ボイスメール通信などです。第42類は、電子計算機、ソフトウェアの設計開発に関するサービスなどです。具体的には、オンラインによる技術サービス、オンラインによるアプリソフトウェアの提供などです。

 

従って、例1は、商品の登録以外にも幅広いサービスを目的として登録しており、例2は、商品のみが登録されています。登録商標を調べることにより、業界やライバルが今後、どのようなトレードマークでどのような製品展開やサービスを考えているかの傾向を知ることができます。

 

例えば、スマートウォッチは、健康管理や健康増進を目指すヘルスケア事業で利用されています。例えば、ソフトバンクと住友生命は、住友生命が提供している健康増進型保険「Vitality」の契約者にウェラブルデバイスを提供するサービスを実施しています。

 

Vitalityは、南アフリカのベンチャー企業「ディスカバリー社」が1996年に開発し、世界21カ国で1000万人以上が契約しており、日本でも、2018年に住友生命から発売されて話題になりました。Vitalityのような健康増進型保険は、健康状態チェック、健康診断書提出、ウォーキングイベントへの参加等の取組みにより、保険料が割引される仕組みの保険です。そのため、IoT端末で取得するデータが重要な要素になります。

 

参考)

住友生命「健康なほど保険料が安い」保険の成否 (東洋経済オンライン)

https://toyokeizai.net/articles/-/308876?ismmark=a

 

また、スマートミラーやIoTミラーと呼ばれているIoT端末は、デジタルサイネージが進化した機器です。デジタルサイネージは、デジタル技術を活用してプロジェクタなどに映像や文字広告を表示するシステムです。

 

アフラック生命保険は、IoTミラーを用いて、保険契約者の健康状態をチェックするとともに、保険シミュレーションを行うサービスを提供しています。例えば、IoTミラーの前に立つと肌年齢や笑顔スコアなどを測定します。また、保険加入のシミュレーションや未来の自分などのゲーム機能もあります。

 

IoTミラーが測定したデータは蓄積されますので、その日の健康状態を比較して見ることが可能です。

アフラック生命保険は、オンライン相談システムを導入しており、健康状態に合わせた最適のタイミングでサービス提供を提案することを目指しています。

 

参考)

“魔法の鏡”が脈拍測定やレシピ提案など健康をサポート! DX戦略が導く新たな保険のかたち

(FNNプライムオンライン)

https://www.fnn.jp/articles/-/346174

 

このように、保険分野では、インシュランスとテクノロジーを組み合わせた「インシュアテック」と呼ばれる新しいサービスが始まっています。米国では、インシュアテック事業を行うベンチャーのIPO(株式公開)が相次いています。インシュアテックでは、IoT端末を通して取得するデータが重要です。

 

参考)

IoT保険 一挙両得 歩数で割引、健康増進 (日本経済新聞)

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78788770V21C21A2MM0000/

                                                                             (一色 正彦)

 

3.まとめ

今回の記事では、IoTはサービスに用いられると言われる物の、実際には一般消費者が商品として使用するものも多いので、IoTの中の商品にフォーカスをあてて紹介しました。

 

IoT商品は家の中での家電商品もIoT化されている上に、今まで電気製品とは無縁であった家の中の様々な物がIoT化商品になっていることも紹介させていただきました。

 

IoT端末を利用したサービスは、今後も多様な展開が期待されています。それに伴い、新しい機器やサービスの商標が登録され、他社と差別化するブランド戦略に活用されると思われます。商標登録の傾向から、業界やライバルの動向をチェックしてみてください。

 

次回予定

第5回 IoTと意匠権の関係について分かりやすく解説します。

 

改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について(特許庁)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/kaisei_hogo.html

※カシオがスマートウォチのGUIを意匠登録しており、その例を予定しています。

 

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