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IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画第5回  IoTと意匠権の関係について分かりやすく解説します

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IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画も早いもので5回目を迎えました。今回はIoTの中でもスマート~という分野を解説した後に、意匠権について解説いたします。

 

IoTと関係するスマートという分野について解説します

スマートという分野について

IoTと関係ある言葉としてスマート家電、スマートファクトリ、スマート農業など沢山スマートという名前がつく分野があります。

今回は“スマートという分野”はどういう定義で、いつ頃からスマート~と言う分野が広まったのか?について解説していきます。

 

スマート~の歴史はiPhoneから始まった

スマート~という分野の歴史の始まりは、予測つく方も多いかと思いますが、“スマートフォン”です。スマートフォンが普及したのは2007年のAppleのiPhone発売(日本では2008年にソフトバンクから発売)であることは間違いありませんが、実際にはスマートフォンは2000年代初頭から存在していました。

 

日本では流行りませんでしたが、iPhone以前に、カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)という会社がBlackberryというスマートフォンを発売し、欧米のビジネスマン中心にかなり普及しました。

 

筆者が2005年前後に米国に出張して米国国内便に搭乗した際、飛行機が着陸した後すぐに多くの周りの方がBlackberryの電源を入れてメールを閲覧する姿を何回か眼にしました。

 

BlackberryにはWi-Fiも搭載されており、当時Wi-Fiを携帯電話に搭載するというプロジェクトのリーダーを務めていた筆者は、海外でのスマートフォンの普及を注視していました。

 

それでもスマートフォンは、欧米含めて一部のビジネスマン向けというイメージであり、爆発的な普及に至らなかったのです。

 

そのスマートフォンを全世界的な普及をもたらしたのがiPhoneでした。iPhoneはそれまでのスマートフォンとは画期的に異なるものでした。

 

タッチペン無しに、指でタッチパネルを触る。そしてマルチタッチといって2つの指を使って表示を大きくしたり、小さく出来たりするなど、今思い返しても画期的な商品でした。

 

従って一般的にスマートフォンの歴史はiPhoneから始まったと言っても間違いないと思います。

 

スマートフォン以降のスマート~の歴史

このiPhoneによるスマートフォンの普及をきっかけとして、世の中でスマート~と名前がつく分野の製品、産業が沢山現れました。

 

ほぼ世の中に現れた順番に、幾つかスマート~を紹介します。

 

スマートグリッド

2010年頃一番目立ったのはスマートグリッドでした。

 

スマートグリッドとは、日本語では「次世代電力網」と呼ばれる電力供給システムです。

 

スマートグリットは、スマートメーターという電力計を搭載し、このメータで電力を監視することによって、ユーザは家や建物の電力消費がモニタ画面ではっきり見ることが出来ます。

 

さらに例えば太陽光発電や風力発電といった発電システムをユーザが保有している場合は、電力会社からの電気供給を抑えると行った電力制御が出来る、ということで脚光を浴びました。

 

最近、理由は分りませんが、“スマートグリッド”という言葉は殆ど使われなくなりました。

 

しかし、太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーによるCO2削減という取り組みは現在も継続的に行なわれており、スマートグリッドという方式は世の中に根付いたといえます。

 

スマートファクトリ

2012年頃、ドイツ政府が提唱するインダストリー4.0=工場におけるIoTを具現化した形の先進的な工場のことをスマートファクトリと言います。

 

工場の様々な設備にセンサーを取り付け、そのセンサーによって工場設備の情報を取得し、それをインターネットに通信路を用いて転送して、工場設備の稼働状況とか、設備劣化診断に使うといったことに使われるようになりました。

 

今でもIoTにおいてサービス事業とは別に自社内工場でのIoT=スマートファクトリという分野は最も多く使用されていると言えます。少し前までのIoT展示会においては、スマートファクトリ分野がかなりの割合を占めていました。

 

スマート家電

スマート家電は、家電機器に搭載した通信モジュールを介してインターネットに接続することによって、外にあるスマートフォン、タブレット端末、PCなどで家の中の家電機器を制御出来るというものです。

 

2015年くらいからスマート家電は普及してきました。例えば、家に帰る30分くらい前に、外出先からエアコンの電源を入れるとか、洗濯機を動かすということが出来ます。

 

また少し分りにくいかも知れませんが、インターネットに接続するのではなく、例えばブルートゥースローエナジー(BLE)という無線方式を使用して、家電機器から直接手持ちのスマートフォンと通信する場合もスマート家電の機能といえます。

 

その場合は、スマートフォンを家電機器のリモコンとして使用出来ます。また、家電機器の様々な情報をスマートフォンの画面で観ることが出来ます。

 

第4回で取り上げたスマートウォッチもスマート家電の範疇に入るかも知れません。

 

スマートシティ

スマートシティとは、2020年代に日本で導入が検討されている都市計画の名前です。

日本におけるSoceity5.0の一環として企画されたものです。昔からある言葉だと思っていたのですが、実は最近出来た用語でした。

 

                                                                              (大森 正)

 

IoTと意匠権の関係

意匠権とは

意匠権は、工業デザインの形状である意匠を保護する知的財産権です。意匠の保護は、1711年、フランスで絹織物の図案に対する模倣を禁止する法令が始まりだと言われています。フランス革命で一時途切れますが、1806年、絹織物の雛型を保護する意匠権法が制定されています。

 

装飾的な彫刻と図案は創作性があり、各国の著作権法で創保護されていました。しかし、意匠を保護するためには、別の法律が必要でした。そのため、英国で1787年、独国で1876年、米国で1842年に、それぞれ意匠を保護する法律の制定が始まっています。

 

日本では美術工芸品の模倣対策のために意匠法が制定されました。1873年、ウィーンで開催された万国博覧会に多くの日本の美術工芸品が出展され、ジャポニズムと呼ばれる日本ブームが起こりました。しかし、その後、多くの質の悪い模倣品が出回るようになり、意匠法の制定が求められていました。そして、1899年、日本でも意匠法が制定されました。

 

参考)

意匠権とは デザインが戦略になった歴史的経緯を解説【登録事例付】

https://compliance.lightworks.co.jp/learn/design-right-history/

 

このように、工業デザインの形状を模倣品から保護するために始まった意匠法ですが、2019年の法改正により、制定以来初の大幅な改正が行われました。従来は、主に工業製品の外観デザインが対象でしたが、ディスプレイの画面デザインや建築物の外観と内装デザインも保護されるようになりました。

 

具体的な意匠権の例は、次の特許庁の資料を参照してください。

 

参考)

事例から学ぶ 意匠制度 活用ガイド(特許庁)

https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/info/document/2907_jirei_katsuyou/jirei_katsuyou.pdf

 

IoTの意匠登録

それでは、IoT 分野ではどのような意匠が登録されているでしょうか。

 

前述のスマート~の中に、スマートウォッチがあります。腕時計型で小型ディスプレイが装備されており、センサーを通じて、温度、心拍数、気圧などのデータやスマホとの接続機能などを持つIoT端末です。世界初のスマートウォッチは、米国で創業し、現在はスイスのオメガとティソトの合弁会社SSIH傘下のHamilton Watch Companyが、1972年に発売したデジタル腕時計「Pulsar Time Computer」でした。

 

その後、LSIの小型化に合わせて、日本でも、セイコーやカシオ計算機からデジタル腕時計が発売されました。カシオ計算機は、1980年代から、電卓や電話帳などの機能を持った多機能デジタル腕時計を発売していましたが、2019年の意匠法改正に合わせて、スマートウォッチのディスプレイ画面に、次の意匠権を登録しています。

「意匠登録第1693484」、2021年8月6日、情報表示用画像、カシオ計算機株式会社

 

原典)

画像の意匠登録事例、P23、特許庁

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/document/kaisei_hogo/gazo.pdf#page=24

 

この画像は、スマートウォッチのディスプレイ画面に利用者の最新状態のデータを表示しています。例えば、時間、歩数、心拍数、消費カロリー等が、動的なデータとして表示されます。使用状態を示す参考図1と参考図2を見ると、それぞれの動的なデータに合わせて、ディスプレイ画面の表示が連動して変化しているのがわかります。

 

従来の意匠法でも、物品に記録・表示されている画像は保護されていました。しかし、GUI(Graphical User Interface)のように、動的に表示が変わり、記録されていない画面のデザインは、保護対象ではありませんでした。しかし、欧米ではGUI のような画面デザインが意匠権として保護されており、グローバルな競争力の確保を望む産業界の意見を受けて法改正が行われました。

 

画面デザインに関する従来の意匠登録と法改正後の違いについては、次の弁護士事務所の解説が参考になると思います。

 

参考)

画面デザインと意匠権 (内田・鮫島法律事務所)

https://www.it-houmu.com/archives/1787

 

また、企業は様々な新しい意匠を登録しています。どのような意匠が登録されているかは、次の特許庁のサイトを参照してください。

 

参考)

改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について(特許庁)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/kaisei_hogo.html

                                                                            (一色 正彦)

 

まとめ

今回は、IoTと関係するスマートという分野について、その歴史も交えて解説しました。

 

スマートという分野の名前が増えたきっかけはiPhoneでのスマートフォンの普及によるものであることをお伝えした上で、スマートグリッド、スマートファクトリ、スマート家電、スマートシティなどの流れを説明しました。

 

また、工業デザインの形状である意匠を保護する意匠法は、2019年の法改正により、動的なデータを含むディスプレイの画面デザインも意匠登録できるようになりました。そして、IoT分野でも様々な意匠登録が行われるようになりました。今後、スマートウォッチ、スマートミラーなど多様な形態のIoT端末でも、各企業は他社と差別化するために特徴のある意匠を登録すると思われますので、注目してください。

 

次回予定

第6回 IoTと知財ミックスの関係について分かりやすく解説します。

 

 

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