ハートテクノロジーズ株式会社 & メタバースアカデミー

IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画1回目 IoT、DX、ビジネスモデル特許の関係についてわかりやすく解説します

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はじめに

ハートテクノロジーズ株式会社のブログにおいて、金沢工業大学(KIT)大学院 客員教授であり、企業へのアドバイス、育成・支援等を行われている一色先生とのコラボシリーズを約2週間に1回の割合で10回にわたり公開することになりました。

 

内容としては、IoT関連技術と知財関連のコラボレーションになります。

IoT関連は技術も重要ですが、IoTがサービス事業に展開されることが多いことを考えると、知財に関する知見が非常に重要になります。

 

そこでIoTの技術を解説することに加えて関連する知財に関する知識も一色先生に解説していただくことになりました。

 

今回が1回目になります。どうぞご愛読よろしくお願いいたします。 

                                                                     (大森 正)

 

共著者のプロフィール

 

一色 正彦(いっしき まさひこ)

金沢工業大学(KIT)大学院 客員教授(イノベーションマネジメント専攻)、東京大学大学院 非常勤講師(技術経営戦略学専攻)、慶應義塾大学大学院 非常勤講師(ビジネススクール)

 

㈱LeapOne取締役・共同創設者、合同会社IT教育研究所 役員・共同創設者

 

パナソニック㈱海外事業部門・法務部門・教育事業部門を経て独立。大学で教育・研究を行なうと共に、企業へのアドバイス(法務・知財教育、人材育成、提携・知財活用・交渉戦略等)とベンチャー企業の育成・支援を行っている。

 

主な著書「知的財産と技術経営」(丸善、共著)、「契約交渉のセオリー」(第一法規、共著)、「新・特許戦略ハンドブック」(商事法務、共著)。(詳細:http://www.llc-itie.com/isshikimasahiko.html

 

 

IoTとデジタルトランスフォーメーション(DX)の関係

 

IoTは終わった?デジタルトランスフォーメーションにおけるIoTの位置づけ

 

この10年くらい技術の世界のキーワード、バズワードとして君臨してきたIoTという言葉が最近になり少しずつ業界ではビッグキーワードから外れるようになっています。

 

例えば2022年4月初旬に東京ビックサイトで行われるJapan IT Week春という展示会においてトップページに掲げられているキーワードは、DX、5G/6G、CX、エッジAI、スマートシティ、等であり、IoTという言葉は全く出てきていません。

 

展示会の中の1つとして、IoT/5G展はありますが、トップページキーワードにはありませんし、セミナーの中のキーワードにもIoTという言葉はありませんでした。

 

10年間ほどビジネスや技術の展示会で必ず出てきたIoTというキーワードが無くなったことで、IoTのブームは終わったのでしょうか?IoTという技術、ビジネスは今後廃れていくのでしょうか?

 

そんなことはありません。

 

現在世の中での1つのビッグキーワードはデジタルトランスフォーメーション(DX)だと思います。そのDXを支える重要な技術の1つがこれからも間違えなくIoTであることに変わりありません。

 

従って今後IoTの技術はたとえIoTという言葉が強調されなくても、DX発展のための重要な技術の1つとして成長していくことは間違いありません。その理由をさらに掘り下げていきます。

 

DXはデジタル技術が無いと成立しません

 

DXのキーポイントは全てのモノや人の情報を数値化して、それをクラウドなどで情報処理することによって、ビジネス、サービス、商品などの変革を図ることです。

 

実はすべてのモノや人の情報を数値化して、クラウドなどに送って情報処理することはこの10年あまりIoTで行われてきたことなのです。

 

具体的には以下のようなことがIoTで行われます

 

 

・モノの中に様々なセンサーデバイスを搭載して、センサーデバイスによって様々な物理的な動作などを数値に置き換えて=デジタル化します。

 

・デジタル化された情報をデジタル無線通信または有線通信によってクラウドを始めとするサーバーに送り、サーバーというデジタルの数字の演算が行われる場所で、様々なデータに変換します。

 

・変換されたデータをグラフなどに変換して見える化を実現します。さらにサーバーからモノに対して制御デジタル信号を送ってフィードバック制御をするなどの機能を実現します。

 

 

従いまして、IoTはDXを支えるデジタル技術として、AI、5G/6G、AR/VR等と同様に非常に重要な技術となります。

 

さらに現在DXというトレンドを表す新たなキーワードとしてメタバースが注目されています。

 

理由としては、メタバースはIoT、5G/6G、AI、AR/VR等を駆使して、現実世界と仮想(サイバー)世界の融合を図るサービス&技術になるからです。

 

従いまして今後のメタバースというトレンドにおいてもIoTが非常に重要な技術になることに変わりはありません。

IoTはサービス事業と密接な関係があります

さらにIoTを用いた事業としては物販だけでなくサービス事業への展開が図られています。

IoTサービス事業を行う上で非常に重要になるのがビジネスモデル特許です。次項では、IoTとビジネスモデル特許との関係について解説をします。

                                       (大森 正)

 

IoTとビジネスモデル特許との関係

ビジネスモデル特許とは

 

次に、IoTとビジネスモデル特許との関係をご説明します。

 

特許権は、技術のアイデアを生み出した発明者の権利を保護する知的財産権です。世界最古の特許法は、1474年ベネチア共和国で成立した「発明者条例」だと言われています。

 

当時、近代科学の父と呼ばれるガリレオ・ガリレイは数多くの画期的な発明を行ない、特許権を取得しています。発明王と呼ばれたトーマス・エジソンは、1847年から84年の生涯で蓄音機、白熱電球を始め2,332件の特許権を取得しています。

 

特許権は、当初、モノや方法の発明に対する技術のアイデアが対象でした。しかし、コンピューターやインターネットの登場により、ICT(情報通信技術)を活用して行うビジネス方法に関する発明も特許権が取得できるようになりました。

 

ビジネス方法の特許は、ビジネスモデル特許と呼ばれています。

 

世界初のビジネスモデル特許は、1998年に米国で取得された「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる投資方法に関する特許です。

発明したシグネイチャ社は、この特許を用いて投資信託を大型化して事業を拡大しました。

 

市場に最もインパクトを与えたビジネスモデル特許は、Amazonの「1-Click特許」と呼ばれるネット販売方法に関する特許です。この特許は、1997年に米国で出願され、その後、各国でも出願されました。

インターネットビジネスに与える影響が大きいため、各国の特許庁で特許性が争われましたが、米国では2007年、日本では2012年に特許権が認められています。

 

1-Click特許は、Amazonのインターネット販売の標準機能になるとともに、Appleへのライセンスなど、Amazonの事業拡大に大きく貢献しました。

 

参考)

特許権の歴史 世界最古の条例から最新ビジネス活用までの進化を解説

https://compliance.lightworks.co.jp/learn/patent-history/

 

IoTの価値を高めるには

 

それでは、IoTとビジネスモデル特許はどのような関係にあるのでしょうか。IoTサービスのモデルは、次の特許庁のサイトに表示されている関係図がわかり易いと思います。

 

 

原典:ビジネス関連発明の最近の動向について(特許庁)

 

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html

 

IoTサービスは、①取得に必要なセンサなどの「ハードウェア」、②通信に必要な「ネットワーク」、③蓄積に必要な「データ」、④分析に必要な「ソフトウェア」、⑤利活用に必要な「システム」により構成されています。そして、これらを統括し、全体のビジネスを成立させているのが「ビジネスモデル」です。

 

それぞれのパートでは、モノや方法の特許権に加えて、データの著作権、サービスの商標権、デバイスの意匠権など、複数の知的財産権の取得可能性があります。その中でも最も重要な権利が、ビジネスモデル特許です。

 

IoTサービスは、各役割を専門とする個々の企業が提携して行うビジネスです。その中でIoTサービスを推進する役割を果たせるのは、全体のビジネスモデルを構築した企業です。更に、その企業がビジネスモデル特許を取得すれば、IoTサービス全体を推進するリーダー企業に成り得ます。

 

特許権は、特許庁に出願して登録すれば、他社を排除できる強い権利です。ただし、特許権は有効なツールですが、万能ではありません。存続期間は出願から20年であり、出願内容は公開されます。そのため、企業戦略により敢えて特許出願せず、秘密にして管理するという選択肢もあります。

 

例えば、オープン・クローズド戦略です。Appleは、iPhoneアプリの開発環境をオープンにしています。そのため、多くの企業がiPhone用のアプリ開発に参入しています。しかし、iOSはAppleが独占し、技術を公開していません。

一方、Googleは、スマホ向けのAndroid OSを公開しています。しかし、差別化技術である検索技術は、公開していません。これらは、それぞれの企業の知財戦略です。

 

参考)

オープン&クローズド戦略(特許庁)

https://faq.inpit.go.jp/content/tradesecret/files/100578260.pdf

 

IoTサービスにおいて、一つのビジネスモデルが20年間以上競争力を維持するのは難しいでしょう。「1-Click 特許」は2018年に存続期間が終了しています。

 

しかし、Amazonは、権利が存続していた間にこの特許を用いて、市場での優位性を確保できたと言われています。そのため、IoTサービスでも、ビジネスモデル特許を取得する価値はあります。

 

それでは、競争力のあるIoTサービスのビジネスモデル特許を取得するにはどうすれば良いでしょうか。まずは、戦略の立案が重要です。IoTサービスは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークから構成されています。

 

そのため、それぞれの機能と事業価値を考慮して、全体として、何に対して、どのようなビジネスを行ないたいかを考慮して戦略を立案します。

 

次に、ビジネスモデルの付加価値を高めるために発明発掘を行ないます。

発明発掘は、特許取得のための重要なプロセスですが、ビジネスモデルのブラッシュアップとしても有効です。そして、特許性のある要素が発掘できれば、特許調査、特許明細書作成という出願手続きに進みます。

 

このプロセスにより、ビジネスモデルの価値を高めたり、リスクを見極めたりできます。そのため、仮に最終的に出願しないという選択をしたとしても、特許性があるか否かの視点から、ビジネスモデルをブラッシュアップするプロセスは有意義です。

 

ビジネスモデル特許が取得できた場合、権利を持つ企業が、IoTサービスの提携戦略において、提携先の企業に対して、リーダーシップと仲間づくりのために優位に立つことができます。そのため、ビジネスモデル特許は、IoTサービスを推進するための企業の中核となる強みであるコアコンピタンスだと言えます。

                                                                            (一色 正彦)

 

まとめ

 

IoTという言葉自体が目立たなくなったとしても、IoTは単なるモノ売りでなく、コト売り、サービス事業につながる技術です。

 

今後ますます発展するDX、メタバースの用途はサービス事業中心になりますので、そのサービスを支える重要な技術の1つであるIoTも益々発展していくでしょう。

 

また、IoTサービス分野でどのようなビジネスモデル特許が取得されているかは、特許情報プラットフォームから検索できます。新しいサービスの企画、ライバル会社の今後の事業傾向などを調べたい場合、特許情報を検索する方法が有効です。

 

参考)

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

 

今後も、IoTの関連技術や特許の動向に注目して行きましょう。

 

次回予定

第2回 AIとデータの著作権の関係について分かりやすく解説します。

 

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