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IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画第3回  ソフトウェア・アルゴリズムと特許権・著作権の関係について分かりやすく解説します

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コラボシリーズ第3回目は、ソフトウエア・アルゴリズムと特許権・著作権の関係について分かりやすく解説します。

 

1.ソフトウェア及びアルゴリズムについて

1-1 ソフトウェアとは?

先ず”ソフトウェア”についてお話したいと思います。今更ソフトウェア?と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これからのお話でソフトウェアというものの理解が深まると思いますので、すこしお付き合いください。

 

そもそもソフトウェアとは、コンピュータ分野でハードウェアと対比される言葉として生まれた言葉です。

 

コンピュータが発明されたのが1946年米国です。ENIACという名前で知られているもので、2万本弱の真空管を用いて作られました。

そしてコンピュータは、何らかのプログラムを実行して動くという仕組みが当初から作られていました。

このコンピュータを動かすためのプログラム及びプログラムを作るための設計のドキュメントを含めてソフトウェアと称しています。

 

ただし、ソフトウェアという言葉はコンピュータのプログラム関連でない分野でも使われています。代表的なのは、動画コンテンツや音楽コンテンツなどメディアに関する中身のことをソフトウェアと言う場合があります。

 

この記事においては、ソフトウェアは、コンピュータのハードウェアに対比する物として説明してきます。

 

1-2 ソフトウェアの種類

ソフトウェアには様々な種類があります。ここでは代表的な物を挙げておきます。

 

1)オペレーティングシステム(Operating System)

 後述するアプリケーションプログラム等を動かすために備えている基本ソフトウェアのことです。 一般には省略してOSと称します。

 代表的なのは皆様も必ず使われているWindows、MacOSです。Linuxという言葉も聞いたことあるのでは無いでしょうか?LinuxもOSです。

 

 これらは一般にパーソナルコンピュータ(PC)で使われているOSですが、後述する組み込み機器にもOSが搭載されている場合が多いです。PCに使われているLinuxも組み込み系OSとして筒使われますが、組み込み系での素早い動作に対応するためにリアルタイムOSというのが組み込み系のOSの代表になります。

 

ここで述べている“組み込み”の定義を記しておきます。“組み込み”とはPCと異なり様々な製品の中に、マイクロプロセッサという半導体が搭載されていてそのマイクロプロセッサを動かすためのプログラムもプロセッサの中のメモリなどに格納されているものになります。一般には、組み込み製品とか組み込みシステムと称しています。

 

2)アプリケーションソフトウェア

様々な機能を果たすソフトウェアがアプリケーションソフトウェアです。代表的なのはPCで用いられるOfficeなどの事務系ソフトウェアです。最近ではスマートフォンの中にも沢山のアプリケーションソフトウェアをダウンロード、インストール出来ることはご存じかと思います。

 

さらに前述の組み込み製品の中にもその製品の機能を果たすアプリケーションソフトウェアが搭載されています。

 

3)デバイスドライバ

PCであれ、組み込み製品であれ、様々なデバイスが搭載されています。例としてはWi-Fiの無線モジュールなどです。それらデバイスを制御するためのソフトウェアをデバイスドライバと称しています。

 

4)ミドルウェア

上記アプリケーションソフトウェアとデバイスドライバの間に位置づけられるソフトウェアで、例えば画像解析ミドルウェアとか、通信処理ミドルウェアとか様々なミドルウェアがあります。この後に記すアルゴリズムはミドルウェアに入る場合が多いです。

 

1-3 アルゴリズム

ここではアルゴリズムという用語、内容についても解説したいと思います。

 

アルゴリズムとは演算法、手続き・手順のことを言います。基本的には計算が可能な手続き・手順のことを言います。 広義には、ソフトウェアのプログラムは全て手続き・手順を記述していますので、全体がアルゴリズムと言えなくはないのですが、一般的には、計算を多用しているプログラムのことをアルゴリズムと言います。

 

前述のソフトウェアの種類の中では、ミドルウェアの中にアルゴリズムが組み込まれる場合が多いです。

 

アルゴリズムで行なう事の基本は、

 

データを保管する

 データを並べ替える

 データを探す

 

 の3つです。

 

 アルゴリズムにおいては、一般に処理速度、性能に関する指標が重要になります。分かりやすい例でいえば、アルゴリズムをうまく取り入れることによっていかに処理速度を速くするかです。

 

もっと具体的な例を申しあげれば、画像データを、通信モジュールを介してクラウドに上げたいと言った場合に、アルゴリズムによって、画像データを圧縮する場合に、圧縮率が高いとか、圧縮してそれを解凍したときでも元のデータから劣化が生じないようにするわけです。

 

このように、アルゴリズムはソフトウェアの中で重要な役割を果たすと言うことを説明させていただきました。

 

2.ソフトウェアと特許権・著作権の関係

2-1 ソフトウェアの特許権・著作権の違い

ソフトウェアは、特許権と著作権の両方で保護される知的財産権です。それでは、どのように違うのでしょうか。

 

特許権は、技術発明を保護する制度です。コンピュータを利用した発明が、ソフトウェア特許になります。No.1ブログでご紹介したビジネスモデル特許は、ICT(情報通信技術)を利用して行うビジネス方法の発明です。そのため、ビジネスモデル特許は、コンピュータを利用した発明であり、ソフトウェア特許の一種です。

 

著作権は、著作物の創作性を保護する制度です。ソフトウェアは、コンピュータプログラムにより構成されています。プログラムは、創作者により表現方法が異なります。その表現方法には創作性があると判断されています。日本では、1985年の著作権法改正により、プログラムが著作権法で保護されるようになりました。

 

アルゴリズムは、コンピュータに対する指令の組み合わせであり、創作的な表現ではないため、著作権法では保護されません。ただし、特許権に必要な要件(新規性、進歩性など)を満たしたアルゴリズムは、特許権として保護されます。

 

このように、特許権はプログラムの技術アイデア、著作権はプログラムの表現が対象という違いがあります。特許権は、特許庁に申請して審査を受けて登録する必要がありますが、著作権は、出願や登録の必要はありません。No.2ブログでは、AIとデータの著作権について解説しましたが、今回は、主に、ソフトウェアの著作権について、特徴と注意事項を解説します。

 

著作権の発生から消滅までを整理すると次のようになります。

 

著作権は、創作と同時に創作者に権利が帰属します。プログラムは、単独企業が開発する以外に、複数企業が役割を分担して開発することもあると思います。この場合、各担当部分の著作権は、各開発企業に帰属します。複数の創作者により作成された著作物は共有となり、「共同著作物」と呼ばれます。会社の業務として作成した著作物は、「職務著作」と呼ばれており、原則として、会社に帰属します。

 

著作権は財産権ですので、プログラムの著作権は利用許諾(ライセンス)と譲渡が可能です。しかし、著作権は、複数の権利から構成されています。例えば、コピーのための複製権、ネットに掲載するための公衆送信権などです。著作権法(第27条・第28条)には、具体的な権利が明記されています。著作権をライセンスや譲渡する場合、単に著作権という表現ではなく、著作権のどの権利を対象にするかを明確にする必要があります。

 

参考)

著作者の権利の内容について (文化庁)

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/kenrinaiyo.html

 

さらに、共同著作物の場合は、第三者にライセンスや譲渡する場合はもちろん、共同著作物の権利者が自ら利用する場合も、すべての権利者の承諾が必要です。

 

また、著作権は文化・芸術の保護から始まったため、著作者人格権があります。公表すべきか否かを指定できる公表権、氏名を表示するか否かを指定できる氏名表示権と著作権者の意に反した改変をされないための同一性保持権です。人格権は、契約で譲渡できないため、譲渡契約では、著作者人格権は行使しないという特約を記載するのが通常です。

 

契約は口頭でも成立しますが、ビジネスでは契約書を締結するのが通常です。著作権のライセンスや譲渡する場合、契約書の締結が基本です。特に、著作権譲渡契約では、報酬を払っただけでは譲渡されたことにはならず、譲渡することを契約書に記載する必要がありますので、注意してください。

 

著作権に関する契約については、文化庁がマニュアルを公開していますので、参考にしてください。

 

参考)

「誰でもできる著作権契約マニュアル」第1章1(2)著作権に関する契約について(文化庁)

https://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_manual/1_1_2.html#Anchor-44867

 

2-2 フリーソフトの価値とリスク

最近は、ソースコード(プログラム言語などで記載されたコンピュータプログラム)が公開されているフリーソフトを使って開発する場合も多いと思います。古くは大学や研究機関の研究者がお互いに作成したソースコードを公開し、研究を目的として無償で共有していたことが起源だと言われています。

 

1980年、米国が著作権法を改正して、コンピュータプログラムを保護対象に拡大しました。そのため、自由な研究開発のために、一部の研究者と開発者がソースコードを無償で公開する活動を始めました。1998年、米国で設立されたOpen Source Initiativeはオープンソースを定義するとともに、ソースコードをオープンすることを文化とした啓発活動を行っています。

 

参考)

Open Source Initiative

https://opensource.org/

 

このような経緯で公開されたソフトウェアは、OSS(オープンソースソフトウェア)と呼ばれています。OSSではソースコードを自由に利用、改変などができますので、企業には開発期間の短縮や開発コストの削減などでメリットがあります。

 

しかし、利用には一定の制約条件がありますので注意が必要です。OSSはソフトウェアの著作権者が提示している利用条件に従った範囲で利用できます。利用条件をよく見ておかないと権利侵害になることがあります。

 

また、ソフトウェアにはメンテナンスが欠かせませんが、メンテナンスが提供されていない場合や、提供されていても、メンテナンス条件が限定されている場合が多く、基本的には、自己責任でメンテナンスする必要があります。ソフトウェアの有償ライセンスであれば、通常、欠陥に対して一定条件の品質保証がありますが、OSSの場合は、保証を行わない無保証の場合が多いことにも注意してください。

 

OSS利用の具体的な注意点は、次の弁護士のサイトを参考にしてください。

 

参考)

OSS(オープンソースソフトウェア)利用上の注意点 (弁護士法人内田・鮫島法律事務所)

https://www.it-houmu.com/archives/1848

 

メンテナンスに関連しては、OSSのサイバーセキュリティ上の問題も指摘されています。例えば、ソースコードに脆弱性があり、第三者からサイバー攻撃を受けて情報が漏洩するなどのリスクです。OSSのセキュリティ問題と各社の取り組みについては、経済産業省が2021年に公表している次のレポートが参考になると思います。

 

参考)

「OSSの利活用及びそのセキュリティ確保に向けた 管理手法に関する事例集」(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210421001/20210421001-1.pdf

 

OSSに似た取り組みに、クリエイティブ・コモンズ(CC)があります。CCは、2001年、米国で知財やインターネット専門家が発起人となり、著作物の適正な利用促進を目的とした始めた非営利団体です。例えば、「BY(表示)」、「NC(非営利)」、「ND(改変禁止)、」「SA(継承)」のように対象の著作権がどのように利用できるかがアイコンで分かりやすく示されています。2013年、文化庁はCCの活動を支援することを表明しています。

 

CCは、対象の著作物を利用する際に有益ですが、ソフトウェアについては、「ソースコードとオブジェクトコードを適用対象にしていないので推奨できない。(「特によくある質問」No.5参照)」とされています。CCについては、CCジャパンのQ&Aを参照してください。

 

参考)

FAQ  よくある質問と回答 (クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)

https://creativecommons.jp/faq/

 

3. まとめ

ソフトウェア、アルゴリズムはハードウェアと異なり、一般には見えにくいものですが、ソフトウェアによってシステム、製品の機能が実現出来る、アルゴリズムによって製品の性能が向上するといえます。

 

従って、ソフトウェアは、IoTにおいて重要な機能です。ソフトウェアは特許権と著作権で保護されていますが、対象が異なります。ソフトウェアの利用には、著作権のライセンスと譲渡のルールをよく理解しておく必要があります。特に、OSSのように一定の条件下で無償利用できるフリーソフトは便利ですが、利用条件やメンテナンスなどに注意が必要です。

 

ソフトウェアは、知財権の特性をよく理解した上で、有効に活用してください。

 

次回予定

第4回 IoTと商標権の関係について分かりやすく解説します。

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