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IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画第6回 IoTと知財ミックスの関係について分かりやすく解説します

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IoT関連技術と知財関連コラボシリーズ企画も早いもので第6回目を迎えました。

今回は、IoTの様々な技術の組み合わせにおいて知財ミックスという戦略が重要になりますので、お伝えしたいと思います。

 

1.IoTは様々な技術の組み合わせ

著者がIoT分野に関わってから約9年経過しました。

 

2013年、当時の新規事業開発部門において、建造物の劣化診断というサービスを実現するために、どういうセンサーを使うべきかの検討も含めて、“構造ヘルスモニタリング”の開発検討を行なったのがIoT関係の開発に関わった発端になります。

 

2013年当時はIoTという名前はそれほど浸透していませんでした。

 

翌年2014年頃から、IoTという言葉がかなり浸透してきたと記憶しています。

 

今回のブログでは、IoTが様々な技術の組み合わせによって実現されていることを紹介したいと思います。

 

以下にIoTの構成要素について記していきます。

 

IoT構成要素(1)ハードウェア

まずはIoTを構成するためにはTの部分が必ず存在します。

TとはThingsの略、すなわち物=ハードウエェアの分野になります。

 

IoTはInternet of Thingsの略で有り、IoT以前からあったITはInformation Technologyの略で、I,Tの略語の意味が違うことに加えて、ITとIoTの決定的な違いは、ハードウエェアがあるかどうかなのです。

 

もちろんITであってもクラウド、サーバにはいわゆるコンピュータシステムがあり、それ自体ハードウェアといえますが、ここでの記述は、コンピュータシステムは含めないことにします。

 

ここでのハードウェアは、物としてコンピュータシステム以外に存在する物と定義したいと思います。

 

そして、IoTにおけるハードウェアの場合は、以下の2つのモノが必ず備わっております。

  • そのハードウェアの様々な状態を検知出来るセンサー
  • センサーの情報をクラウド等のサーバに送るための通信機能

 

IoT構成要素(2)ネットワーク

次に上記ハードウェアからのセンサー情報等をインターネットに送るためのネットワークが必要になります。ここでのネットワークとは当然ながら通信ネットワークになります。

 

通信ネットワークは、大きく分けて有線通信ネットワークと無線通信ネットワークになります。

 

ハードウェアからのセンサー情報等をインターネットに送るためのネットワークの構成としては以下のような種類が考えられます。

 

  • ハードウェアから直接無線通信でインターネットに繋がる構成

→携帯電話の無線方式である4G/5Gを用います。

 

ただし、データ量が少ない場合はいわゆるスマートフォンなどの携帯電話の無線方式とは別に、LPWA(Low Power Wide Are)という方式を用いる場合もあります。

 

LPWAにはSigFox、Lora、CAT-M1などの方式があり、2017年くらいからLPWAが普及してきています。

 

  • ハードウェアからWi-Fiで屋内のWi-Fiアクセスポイントと通信をし、Wi-Fiアクセスポイントから先は、有線のブロードバンド回線を通してインターネットに繋がる構成

 

  • ハードウェアからBLE(ブルートゥース・ローエナジー)という無線方式で屋内のIoTゲートウェイと通信を行い、IoTゲート上から先は、携帯電話の無線方式、または有線のブロード回線を通してインターネットに繋がる構成

 

どの構成にするかはハードウェアの規模によって決める必要があります。例えば、家電製品の類いは最近①の構成の場合が増えています。

 

一方工場などの設備でそれぞれのセンサー自体が一つのハードウエェアで、複数のセンサーの情報を束ねてインターネットに繋げたい場合は、②もしくは③の構成になります。

 

IoT構成要素(3)データ蓄積サーバ

ハードウェアからのセンサー情報等を蓄積するサーバが必要になります。

 

最近はIoT用途に特化したクラウドサーバーがクラウド事業者から提供されています。代表的なのはAmazonのAWS-IoTです。

 

通称IoTプラットフォームと言う場合もあります。

 

ハードウェアからのセンサー情報単体は、動画ストリーミング情報などに比べて極めて情報量は少ないものの、頻繁にハードウェアからデータが上がってくること、かつ数多くのハードウェアからデータが上がってくることも考えられ、トータルでのデータ量は膨大になると考えられます。

 

且つデータをすぐに解読・演算してリアルタイムに“見える化”するといったアプリケーションの場合は、データ蓄積サーバ自体、クラウドの奥側ではなく、(2)で記したネットワークでデータを受ける先端、いわゆるエッジ側にデータ蓄積サーバを設置するといった配慮が必要になります。

 

IoT構成要素(4)データ分析サーバ

(3)で記したデータ蓄積サーバからのデータを分析してハードウェア側にデータ分析結果をフィードバックするといった機能を実現するサーバです。

 

このデータ分析サーバはIoTシステム特有のものではなく、いわゆるITの世界において必ずと言って良いほど、データ分析サーバが存在します。

 

特に10年くらい前から、データ分析においてAI,具体的には機械学習や深層学習(ディープラーニング)の技術が進化しました。

 

IoTにおいてもTから取得したデータをデータ分析サーバでいかに解析して活用するかが、重要になります。

IoT構成要素のまとめ

このようにIoTを構成する要素はハードウェア、ネットワーク、データ蓄積サーバ、データ分析サーバなど多岐にわたります。

 

さらにはデータの見える化の結果をスマートフォンやPCで見るといったアプリケーションが増えており、その場合は、スマートフォンやPCもIoT構成要素に加わることになります。

 

一般的にはIoTシステムの開発を一社で全て行なうのは困難で有り、複数の会社と協業する、または外部開発会社に委託して開発を進めることになります。

 

さらには事業を行なうにあたってはシステム全体のセキュリティ戦略と、事業を守るための知財戦略が重要になります。

                                                                         (大森 正)

 

2.IoTと知財ミックスの関係

知財ミックスとは

知財ミックスは、複数の知財を組み合わせて活用する知財戦略です。「知財ミックス」もしくは「知的財産権ミックス」と呼ばれています。比較的新しい言葉であり、定義が明確ではありませんが、日本知的財産学会では、知的財産権(特許権、著作権、商標権、意匠権等)とノウハウを組合せることを「知財ミックス」、各種知的財産権を組合わることを「知的財産権ミックス」と区別しています。

 

参考)

一般社団法人日本知的財産学会、「知財人財育成研究分科会」

https://www.ipaj.org/bunkakai/jinzai_ikusei/event/24th_reikai.html

 

ここでは、両方の概念を総称して「知財ミックス」と称します。例えば、AppleのiPhoneは、「スマホのロック状態を解除するボタン」に関して、次のような複数の知財を権利化しています。

 

 

特許権:第5457679号

  • ロック状態を解除するボタンに関する技術発明

意匠権:第135679号

  • ロック状態を解除するボタンに関するスライドボタンの形状

 

参考)

UI/UXの知財ミックス事例1(弁理士 杉浦 健文)

https://www.evorix.jp/blog/uiuxの知財ミックス事例1

 

なお、iPhoneの商標は、Appleが各国で取得していますが、日本ではアイホン株式会社が取得しており、同社からライセンスを受けています。また、iPhoneに組み込まれているApple Storeには、第1回でご紹介したAmazonからビジネスモデル特許「1-Click特許」(2017年に権利期間が終了)のライセンスを受けていました。

 

AppleのiPhoneは、ハードウェア技術とコンテンツサービスを組合せることで、他社と差別化し、新たな価値を生み出した製品です。そして、その価値は、複数の知財で保護されています。

 

 IoTの知財ミックス

それでは、IoT分野ではどのような知財ミックスが考えられるでしょうか。

 

第1回でご紹介したIoTサービスのモデルに基づき、どのような知財ミックスの可能性があるかを示してみました。

原典:「ビジネス関連発明の最近の動向について(特許庁)」に基づき作成

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/biz_pat.html

 

映画やドラマなどのコンテンツをストリーミング配信しているNetflixの権利も、複数の知財で守られています。

 

Netflixは、自ら制作して著作権を持つコンテンツと著作権者から独占ライセンスを取得しているコンテンツを「Netflix独占配信」として、自社のサイトで配信しています。商標権は、独占配信を意味する赤字のNマークを始め、複数の商標を複数の分類(例:第9類 情報処理装置、第35類 広告、第38類 電気通信、第41類 映像サービス、第42類 ソフト開発サービス等)で登録しています。

 

特許権も、積極的に出願しています。米国特許については、Netflixのサイトで公開しています。

 

参考)

Netflixヘルプセンター

どのような知的財産権表示を知っておく必要がありますか

https://help.netflix.com/ja/node/24852

Netflixが映画やドラマのライセンスを取得する方法

https://help.netflix.com/ja/node/4976

Netflixの特許

https://help.netflix.com/ja/node/25888

 

日本でも複数の特許権を取得しています。最近では、次の特許が出願されて、公開されています。

特許権は、出願してから1年6ヶ月後に公開されます。

 

出願番号:特願 2020-137306

出願人  :NETFLIX INC. USA

出願日   :2020年8月17日

発明名称:曲面ディスプレイ画面用のバース補正

 

出願番号:特願2022-524711

出願人  :NETFLIX INC. USA

出願日  :2020年2月11日

発明名称:ユーザーの選択に応答して対話型メディア作品の再生を進めるための手法

 

参考)

特許情報プラットフォーム(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

 

Netflixは、1997年の設立当初、世界初のウェブサイトによるDVDレンタルサービスでした。その後、VOD(Video on Demand)に事業を集中したことで急成長しました。そして、その頃から、積極的に特許出願しています。

 

更に、Netflixは、IoT分野でもユニークな製品を作っています。例えば、コンテンツを再生中に視聴者の身体の動きを靴下形態のセンサーで感知し、寝入っていると判断するとそれを察知して、配信中の動画を止める「Netflix 靴下」です。

 

参考)

眠ったら動画再生を止める「Netflix靴下」(日経ビジネス電子版)

https://business.nikkei.com/atcl/report/15/061700004/010700070/

 

                                                                          (一色 正彦)

3.まとめ

IoTの構成要素としては、センサーを含むハードウェア、ネットワーク、蓄積サーバ、分析サーバ、スマートフォンやPCといった端末等に多岐にわたります。

 

すなわち複数のコンポーネントの開発を同時に進めることがIoT開発において求められます。

 

さらに、製品やサービスの競争力を高めるため、複数の知財を組合せる知財ミックスは有効な戦略の一つです。IoT 分野でも、他社と差別化し、競争力を高めるために、知財ミックスは活用すべき戦略であると思います。

 

参考)

知財ビジネス入門 ランチパスポートが開いた新路はどう評価できるか

https://compliance.lightworks.co.jp/learn/ip-education/

 

次回予定

第7回 電子データと情報セキュリティの関係について分かりやすく解説します。

 

 

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