メタバース書籍・本 紹介シリーズ12回目 図解まるわかり メタバースのしくみ
メタバースおすすめの書籍紹介 ~入門書・実用書・ビジネスに繋がる本など特長も紹介します ~シリーズの12回目です。
ハートテクノロジーズの関係機関である一般社団法人 メタバースアカデミーでは、メタバースに関する様々な書籍が発売される度に購読して、メタバースに関する基本的な知識や技術を蓄える努力を続けています。
既に11冊の書籍・本を紹介しましたが、最近また沢山メタバースの新刊書が発刊されていますので、逐次新しい本の紹介をしていきたいと思います。といことで今回は12回目です。
12回目は、図解まるわかり メタバースのしくみ という書籍を紹介したいと思います。
目次
図解まるわかり メタバースのしくみ という書籍について
著者:波多野 俊之
出版社:翔泳社
発売日:2022年9月7日
著者の波多野さんは、株式会社ビーライズの代表取締役社長です。
ビーライズは、バーチャルイベント、展示会の実施、XR事業、VR研修、デジタルコンテンツ開発などを行っている会社で、まさにメタバースを創る会社です。
概要:メタバースのしくみについて解説した本です。メタバースの基本から始まり、
メタバースの市場、Web3.0との関係、グラフィック、プログラミング、通信、
サーバーなどの技術紹介、メタバース体験方法、ビジネスへの活用、未来など
多岐に渡って解説しています。
特徴:これまでの日本のメタバース本の中で、一番技術的なことも書かれている本です。
メタバースに関するグラフィックやプログラミング、サーバ等について触れています。
構成としては、すべてのページが左側が文章、右側が図解に統一されています。
メタバース超入門
メタバースがよくわかる本
などと同じ構成と言えます。
目次を引用しての中身の解説
第1章 メタバースの基本
~メタバースの語源と歴史~
メタバースの基本ということで9項目に分けて、メタバースの定義、歴史、メタバースは誰が作るのか?等に触れています。
メタバースはほとんどの本が1992年の米国ニール・スティーヴンスン著のSF小説”スノウクラッシュ”が起源と称していますが、この本では、それ以前1980年代からの歴史を紹介しています。
元祖メターバスは1986年に登場(日本では1990年に登場)したHabitatというコミュニケションアプリであると紹介しているのが興味深いです。
まだ1990年というと一般にはインターネットが浸透していませんでしたから、パソコン通信などで行っていたのだと思います。
また、メタバースは事業運営者側だけで作るのではなく、ユーザー側がワールドやアバターを自ら作成し、メタバース空間を作っていくことを強調しています。
メタバース業界用語になっている”クリエイターエコノミー”の世界を説明しています。
さらに関連用語としてUGC(User Generated Content)=ユーザーが投稿したコンテンツという言葉も
紹介しています。
第2章 GAFAMやゲーム業界とメタバース
~メタバースをめぐる市場争い~
メタバースは今後どのように発展していくかということに触れたうえで、現行メタバース関連で目立っているキー企業を紹介しています。
タイトルはGAFAM、ゲーム業界となっていて、メタ社、Microsoft、Unreal Engineで有名なエピックゲームス社などを取り上げているうえに、さらに半導体の製造会社であるNVIDIAがメタバースのプラットフォームにも進出していることなども取り上げています。
章の後半ではメタバースは日本企業にとってもチャンスであると記しています。
その理由は、これは色々な他の本も取り上げてますが、日本はゲーム、アニメ系の文化発展という素地があるからだと説明しています。
私はこの章を読んで2つ感じていることがあります。
1)メタバースはこれから間違いなく発展する。先ずはWebサイト、SNS、Web会議システム等のメタバース化が進むだろう。
ここでのメタバース化は、先ずは3次元化とアバターによる没入というところから進化していくだろう。
2)日本企業のメタバースビジネスチャンスは間違いなくあるが、大きなプラットフォームを制するのは難しい。
ワールド、アバターなどのクリエイターエコノミーのための基盤及び、VRゴーグル、ARグラスなどのハードウエアを作るためのデバイスや、今後メタバースの主流になると思われるミラーワールド実現のためのセンサや無線通信技術でのビジネスチャンスがあるのではないだろうか?
第3章 メタバースとWeb3.0
~ブロックチェーンの技術とメタバースの関わり~
この章ではいわゆるWeb3.0と言われる世界での基幹技術であるブロックチェーンや
NFTを非常に分かりやすく説明しています。
そして投機的なNFTでなく価値あるNFTの発展を主張していることには好感が持てます。
メタバースとWeb3との関係についても説明しています。
メタバースの空間内で、自分の作品を発表したり、イベントを行ったり、商品を売買するということが当たり前になっていくという予測の中で、それを支える技術としてブロックチェーン、NFTが使用されるといった説明になっており、私もそうなると思っています。
是非投機を煽るのでなく、健全にWeb3.0がメタバースと共に発展してほしいと思います。
第4章 メタバースを表現するグラフィック
~3DCGとデザインによる世界観の表現~
この章は極めて技術的な説明の章になります。
どうやってメタバースを表現するのか?作るのか?といった観点で、開発の仕方、空間デザインの仕方、グラフィクスの作り方、アバターの作り方などを説明しています。
この章はメタバースを創る側の事業、ビジネスに興味ある方にとっては入門編として、非常に役立つ章になっています。
第5章 メタバースを作るプログラミング
~プラットフォームによる開発手法の違い~
この章は4章以上にメタバースを創る側、それもいわゆるソフトウエア開発、プログラミングをする人、またはそういう人たちに開発を委託することを考えている人たちにとって役に立つ内容になっています。
メタバースに限らず、PC向けのアプリ、スマホ向けのアプリ、Webを用いたアプリの開発の仕方概要を説明した上で、それぞれのアプリで使用されるプログラミング言語にまで言及しています。
さらにはゲームエンジンの活用、3DWebアプリの活用について詳しく説明しています。
第6章 オンライン通信とサーバー
~メタバースを支えるサーバー
沢山のメタバース書籍の中で、サーバー側の仕組みまで説明している本は今までありませんでした。
やはり著者の会社が、今までVR関係などのWebアプリケーション開発をしてきたこともあり、メタバースにおけるマルチプレイやコミュニケーションにおいて、いかにサーバーの働きによるところが大きいかがわかっているが故の解説だと思います。
メタバース関連のサービス事業を行う場合はサーバーは必ず必要にあります。サーバーにかかるコストも計算した上で、メタバースサービス事業が成り立つかの見積もりをすることが非常に重要になると思います。
第7章 メタバースを体験する方法とそのしくみ
~さまざまなデバイスの種類と特徴~
この章はメタバース体験の方法について記しています。
著者の会社がVR技術が専門ということもあり、VRデバイスの解説から始まっています。
体験する方法だけでなく、VRの仕組みに触れており、7章も半分は技術解説といえる章です。
第8章 ビジネスにおけるメタバースの活用法
~自社のビジネスにメタバースを活用するには?~
メタバースの活用について説明していますが、全体的には少し抽象的な説明が多いと感じます。
どういうビジネスに活用すれば良いか?という説明はそれほどありません。
その中で、デジタルツインとしてのメタバースのところは大いに共感しました。
仮想空間において、リアルタイム性と現実空間との連動がデジタルツインであり、現状のスマートシティ、スマートファクトリー、製品開発、インフラでのサービスなどがデジタルツインの世界に移行できると説明しており、私もまったくその通りだと思っています。
そのためには様々なところにセンサーを装着し、センサーの情報をサーバーに送るための
通信の整備が必要になります。
そういった広い意味での、メタバースインフラの構築というところにもビジネスチャンスがあると私は感じています。
さらに”自社でメタバースを内製する必要はない”と言い切っているのも、活用する側の会社に向けてのメッセージとして共感しました。
第9章 メタバースのこれから
~メタバースの未来を想像しよう~
今後のメタバースの未来について、いくつかの項目について説明しています。
よく他の本でも言われるように、明るい未来を創るための法整備が必要ということにも言及しています。
また著書の専門分野であるVR/ARデバイスの進化についても詳しく解説しています。
全体まとめ感想
*数々のメタバース本の中で、最もメタバースを実現するための技術について多く説明されている本です。
*初心者向けではありません。かつ技術者向けであり、一般の方が読むと第4章から7章は難解かもしれません。
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